初産の場合、母乳がたっぷり出るまでに1~2週間かかることもあります

産後のママは、母乳はいつから出るのか悩んでしまうことがあるでしょう。初めての母乳育児でとまどったり、不安を感じたりするかもしれません。
しかし、産後直後に母乳が出にくいのは一般的なことです。心配し過ぎると、その不安がストレスとなり、逆効果になることもあります。
そこで今回は、母乳はいつから出るのか、具体的な時期について解説します。母乳の出が悪いママも安心して育児を行える工夫を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
母乳が出ない?! よくある悩みと焦りたくない理由

産後すぐに母乳の出が悪く悩む方は少なくありませんが、それほど心配する必要はありません。なぜ産後直後に母乳が出ないのかその理由と、焦る必要がない理由を以下で解説します。
出産直後は母乳が出ないことが多い
多くの人のイメージとしては、生まれたばかりの赤ちゃんを見ると母性本能が刺激され、自然と湧き出るように母乳が出ると考えているかもしれません。しかし、産後直後の母乳の量は、極めて少ないのが一般的です。
なぜなら、産後に起こるホルモンの変化が安定するのに時間がかかるためです。一般的には、産後2~5日ごろに母乳の出がよくなることが多いため、産後すぐに母乳の出が悪いからといって慌てる必要はありません。
産後直後の母乳は極めて少ないのですが、「初乳」と呼ばれ赤ちゃんにとってとても重要です。通常より濃い母乳が出ており、赤ちゃんが飲むことで病気に対する抵抗力を獲得します。
また、新生児の胃は小さく、栄養豊富な初乳だけで十分に足りているため、量にこだわらなくても大丈夫です。
「母乳神話」や周囲のプレッシャーに惑わされない
産後は「すぐにたっぷりの母乳が出るのが当たり前」といった母乳神話があります。しかし、初産の場合は、母乳がたっぷり出るまでに1~2週間かかることも多いため、母乳の出が悪いからといって気にする必要はありません。
むしろ、周囲のプレッシャーがストレスになることのほうが問題です。ストレスはホルモン分泌に影響を与えることがあるため、「産後は自分のペースで母乳が出れば大丈夫」というふうに、ゆったりとした気持ちでいてください。
母乳の出方には大きな個人差がある
産後すぐの母乳の出方に個人差が見られるのは、ホルモンの切り替えまでの期間が人によって異なるからです。誰もが機械的に体が変化するわけではありません。
特に、帝王切開や分娩時に出血が多い場合は、ホルモンバランスの切り替えが遅くなる傾向があります。妊娠を維持するためプロゲステロンが多く分泌していましたが、産後に胎盤が排出されることで不要になり、代わりに母乳の分泌を促すプロラクチンが分泌しだします。
しかし、母乳を出すためにはプロラクチンだけでは不十分で、赤ちゃんが乳首を吸う刺激も必要です。この刺激でオキシトシンが分泌され、母乳の出が促されていきます。
生まれたばかりの赤ちゃんが乳首をうまく吸えない場合もあるため、産後の母乳の出に個人差があるのは、当然のことなのです。授乳を続けることで徐々に母乳の量は増えていきますから、焦らず自分のペースを大切にしましょう。
なぜ出ないの? 産後すぐの母乳分泌の仕組み
産後に母乳の出が悪いときは、ホルモンバランスの変化を理解しておくと、不安を減らせるでしょう。体の仕組みを正しく理解してから、母乳を出しやすくする工夫を知ることが重要なため、以下で詳しく解説します。
妊娠中のホルモンバランスの変化と母乳分泌の関係
妊娠中は、乳首から母乳がにじみ出ることはあっても、溢れるほど出ることはなかったはずです。エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが分泌されており、妊娠を継続させ乳腺の発達を促しています。
すでに妊娠中には母乳をつくる準備が始まっている状態です。胸が張って通常より胸が大きくなったように感じられるでしょう。
しかし、上記の2つのホルモンは、母乳の出口を閉じる働きがあります。そのため、妊娠中に本格的な母乳が出ることは基本的にありません。
出産後、母乳分泌が本格的に始まるまでのメカニズム
出産で胎盤が排出されると、プロゲステロンの分泌が急激に減少します。代わりに母乳生成ホルモンであるプロラクチンが分泌し始めるのですが、ホルモンの切り替わりには個人差があり、移行に数日~1週間くらいかかるのが一般的です。
プロラクチンが増えるのは産後数日経ってからなので、母乳の量が少なくても問題ありません。最初の1~2日はほんの少ししか母乳が出ないのは普通であり、徐々にプロラクチンが増えるにつれて、自然と母乳量が増えていきます。
赤ちゃんが吸う刺激と母乳分泌の関係
産後に母乳の出をよくするためには、赤ちゃんが乳首を吸う刺激も必要です。この刺激で母体にはオキシトシンが分泌され、母乳が乳管を通りやすくなります。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんが乳首をうまく吸えないのは一般的です。赤ちゃんが乳首を吸えない場合でも、吸わせて刺激を得るようにしましょう。
また、産後に分泌されるオキシトシンは、赤ちゃんとの触れ合いでも促されます。生まれたばかりの赤ちゃんをお母さんの胸元に置いて触れ合う「カンガルーケア」を取り入れる産院が多いのは、母乳の出を促す目的があるからです。
出産直後は母体の体力回復が必要なため、寝たまま過ごすことが多いのですが、赤ちゃんをベッドに長時間寝かせたままにするのは避けましょう。授乳前の時間を利用し、赤ちゃんとのスキンシップを深めて、母乳の出を促す工夫をしてみてください。
母乳分泌を促すための具体的な方法

産後に母乳の量が増えなくても、増やす対策があるので心配しなくても大丈夫です。母乳の出が悪いときは、以下の対策を試してみてください。
赤ちゃんと密着するスキンシップ
赤ちゃんと濃厚に接触する「カンガルーケア」は、出産直後だけでなく家庭でも取り入れてみましょう。入浴中は赤ちゃんと肌が触れ合いやすくなるため、ぜひ試してみてください。
赤ちゃんと肌が触れ合うと温もりを感じられるため、ママもリラックスしやすくなります。オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれており、赤ちゃんもママも安心感が得られリラックスできるため、母乳の出がよくなるでしょう。
日常生活でできるだけ赤ちゃんと触れ合うことで、赤ちゃんに対する愛情が高まり、絆を深められます。赤ちゃんがリラックスした環境では、乳首を吸う力が強くなるので、母乳の出を高めるためにスキンシップを深める方法は有効です。
頻回授乳
赤ちゃんに乳首を吸われる刺激が多いほど、母乳の出が促されます。そのため、産後は3時間おきの授乳が理想です。
もちろん、赤ちゃんが母乳を欲しがったら、時間にとらわれず授乳してください。赤ちゃんが泣いてから授乳をするのではなく、ちょっとした変化を見逃さないようにして、授乳回数を増やしてみましょう。
特に母乳を増やすために重要なのが、夜中の授乳です。夜は母乳を促すプロラクチンの分泌が高まるため、横になった姿勢でも構いませんので、できるだけ授乳するようにしてください。
ママの身体のケア
乳房の毛細血管に取り込まれた血液から母乳がつくられるため、出をよくするために母体の健康や栄養管理が重要です。疲労やストレスが溜まると母乳の出に影響を及ぼすので、適度に休息を取り、リラックスできる環境を保ちましょう。
夏場は熱さで脱水になりやすく、冬も寒さで水分補給を抑えてしまうことがあるため、1日2リットルの水分補給を心がけてください。栄養面では、たんぱく質の量を増やしながら、ビタミンやミネラルも意識して摂取するようにします。
授乳中に不足しやすい栄養素は、貧血を防ぐ鉄分や、骨や歯を強くするカルシウムです。肉類や野菜など多様な食材を使ったメニューを取り入れると、母乳分泌に必要な栄養補給がしやすくなります。
分泌を促す母乳マッサージや温湿布
母乳の出が悪いときは、ストレスで血流が悪くなっていたり、乳管が詰まったりしているのかもしれません。これらの原因を取り除くため、マッサージや温める方法はおすすめです。
産後直後に、赤ちゃんがうまく乳首を吸えず乳房に母乳が溜まると、張りがひどくなります。乳房に張りやしこりを感じたら、マッサージで解消させてください。
乳腺が詰まっているときのマッサージ方法は、助産師や専門家に指導してもらうと安心です。正しい方法で行うことが重要なので、気になる点があったら相談がおすすめです。
普段の生活でのマッサージは、入浴後など体が温まったときにやりましょう。乳房を反対側の手で持ち上げ、外側から内側に向かって、さらに下から上に向かってマッサージします。
また、授乳前に乳房をホットタオルなどで温める方法も有効です。血流が促され母乳の流れがよくなるため、乳腺炎予防にもなります。
焦りは禁物! 母乳育児成功のための心構え

初めての出産では、母乳育児がうまくいかず悩んでしまうことがあります。しかし、誰もが初めからうまくいくわけではないため、以下で紹介する心構えを忘れないでください。
母乳育児は長期戦であることを認識
多くのママは母乳が出るまで時間がかかるため、母乳育児は長期戦の目線がおすすめです。初めての人がうまくできなくても当然なので、赤ちゃんと一緒に成長する考えでいましょう。
特に最初の1か月目は、試行錯誤の連続です。失敗しながらでも少しずつ成長していくその過程で、赤ちゃんとの絆が深まるので、一歩ずつ進んでいけば大丈夫です。
母乳育児は1年など長いスパンとなるため、短期的な結果にこだわらず、「今日より明日がよくなれば大丈夫」という楽しむ気持ちで育児に取り組むことをおすすめします。
ママ自身の心身の安定が母乳分泌にも繋がる
もしかしたら、母乳の出が悪い原因は、ママ自身のストレスかもしれません。「母乳が出ない」と落ち込んでいると、それが逆にストレスとなることがあります。
たまには育児から離れて、自分だけの時間を楽しんでみましょう。赤ちゃんが寝ているちょっとした時間を利用して好きな音楽を聴いたり、趣味を楽しんだりするだけでも、ママの緊張がほぐれて血流がよくなり、母乳の出をスムーズにできます。
周りのサポート体制も重要
1人で育児を抱え込みがんばり過ぎていると、力尽きる原因になります。ママが母乳育児に専念できるよう、周りの人のサポートもぜひ利用してください。
たとえば、夫と家事を分担したり、専門家による産後ケアサービスを利用したりする方法があります。同じ時期に出産したママたちが集まるサークルもあるので、おしゃべりを通して育児の悩みやストレスを解消するのもよいでしょう。
ミルク育児との併用も視野に
赤ちゃんにとって母乳は大切な栄養源ですが、母乳育児にこだわり過ぎる必要はありません。産後直後に母乳の出が悪いときや、ママの体調がすぐれないときは、ミルクを使うことも考えてみてください。
混合栄養に罪悪感を抱くママや、「乳首を吸わせないことで母乳が出なくなるのでは?」と心配になるママもいるかもしれませんが、赤ちゃんとママの幸せが一番重要です。赤ちゃん一人ひとりに違いがあるように、育児に正解はありません。
真面目な方ほど自分を追い詰めてしまう傾向があるので、楽しみながら母乳育児を続けてみてください。
(まとめ)産後すぐに母乳が出なくても大丈夫!その理由と安心ポイント
母乳育児の方法はひとつだけではなく、個人差があるため、自分と赤ちゃんに合った方法を見つけてみてください。時間をかけて赤ちゃんと一緒に成長しながら、絆を深めていきましょう。
この記事で紹介した母乳育児の正しい知識を身につけることで、自信をもって母乳育児に取り組むことができます。ぜひ、充実した育児を楽しんでください。